勾留百二十日 元大阪地検特捜部長 大坪 弘道
2012-02-01 13:58:51
勾留百二十日 特捜部長はなぜ逮捕されたか
元大阪地検特捜部長 大坪弘道 文藝春秋
大坪氏は、大阪地検特捜部副部長であった佐賀元明氏とともに、犯人隠避罪で起訴された人物。新聞報道によると、懲役1年6月の求刑、来年3月に判決言しが予定されているということ。
彼の自伝めいた裁判対策の言い訳本なのかという印象ももった。
というのは、留置場で心細い思いをしたことや取調べで疑心暗鬼になって、取調官のあらすじどおりに供述しようかと思ったこともあったとか。
まさに、彼が、人生をかけて行ってきたことを全否定しつつ、泣き言を言っている。
かといって、彼が行ってきたことが冤罪を生んだとか、三井環元検事事件のことには触れていない。
単に弱いだけで、組織の力を借りた虎の意を借りるなんとやらの人生を送ってきた人なのかとがっかりした思いもある。
また、彼を支える元検事や弁護士たち・・・
特捜部長としての彼となんらかでつながってきた人たちのようだし、ここも引っかかるところがある。
要するに、権力を持った者が強いということか・・・
これを読んだ後の感想とすれば、本当に検察や特捜は、良識ある良心のある国民のための組織なのか、一部の政治家や官僚や検事などのための組織なのか。
やはり、疑問が大きくなった。
彼のクロシロについては、心象的には、まっ黒だけれど・・・
検察のあり方をも含めた税金の使い道として・・・、消費税増税の前にすることは山ほどあるでしょうという思いは強くなった。
・どんなに信頼し合っている関係にあっても,捜査機関から同時に取り調べを受けると,これほどまでに深い疑心暗鬼の念が生じてしまう(佐賀元副部長と,同時に別室で取調べを受けているときの心境)
・担当検事が部屋を出ていき,1時間から1時間半戻ってこない。その間,「今,最高検は何をしているのだ? 私の供述を否認とみて逮捕を検討しているのか?」(待たされている間の不安について)
・私は知らず知らずの間に多くの罪を積み重ねてきたという罪悪感を心の中で感じるようになった(これまで特捜検事として多くの人を拘置所に入れた人間として)
・もし妻の取調べをやるなら私は自己の特捜捜査の過程で私自身が直接承知している検察の秘密をすべて暴露しようと本気で思った。私は,自己の美学として,自分がどのような状況におかれようと,秘密は最後まで封印するつもりでいたが,私は,徹底的に抗戦してやろうと決意した。そのことによって私の美学は失われ,私自身も批判を受けるであろうが,検察はそれ以上のダメージを受けるはずである。
・司法というものは誠に恐ろしい権力である。人を極限に追い詰める権力である。人の生身を切り刻む物理的な権力である(「懺悔」と題する文章)。
・ある一点の疑問点を突き,理詰めでそこを突き破っても,別の論点に移し変え,今度はそこを突き破らねばならない。やればゲリラ戦になる。ゲリラ戦では,たとえ局地戦で勝ったとしても,全体勝利には結びつかない。多数の論点において,いたずらに消耗戦を続けるだけである。若い検察官がはまる陥穽である…この事件は,全面自供か全面否認かの2つしかない(否認被疑者の取調べについて)。